川崎フォトエッセイ  その1178  素通り       HOME

 何気ない通りがある。人々が普通に住み、普通に暮らしている通りだ。

 しかし、何気ない佇まいになるには、それなりの年月がかかるかもしれない。

 百年、二百年前には、違った建物が建ち、それが塗り替えられ、今の景観になった場合、その積み重ねが地下にあり、そこから滲み出すものがある。

 だが、昨日今日出来たような住宅地には、それがない。何かをポーズしている様が、まだまだ生乾きのためだ。

 新しいものが押し寄せ、その場所では対応しなくなり始めると、景観も徐々に変わる。そこに今風な物が加わるのだが、以前のものも残っている。

 そのあたりの混ざり具合が、佇まいとしての統一感がなくても、伝わってくる趣がある。

 その趣は、それ以前の時代が、そこにもあったことが念頭にあるためだろう。