川崎フォトエッセイ  その129  映像記憶    ←前 次→  HOME


 僕は漫画家なので、絵を描いている人間である。ところが、見たものを思い出して書くことができない。日頃から使っているライターひとつにしても、満足に書けない。

「映像記憶力」がものすごく弱いのである。だから、形が見えてこないため、線も引けない。従って、絵が書けないのである。
 また「実物はこんなものではないはず」と思いこんでいるため、絵で書けば、嘘になることを知っているので、嘘をつくのが苦しくなる。

 線画は輪郭線で確定してしまう。この「確定線」は言い訳できない線である。実物の機能を損なうような確定線をひいた場合、そのものは絵の上でも嘘になる。たとえば、どう見ても走らないような自転車を書いてしまう。ブレーキがなかったり、サドルの位置がとんでもない場所にあったりとかである。

 通常、見る側は、それなりに補正して読んでくれる。おそらくこんな感じの自転車が世の中にあるのだろうと……。