川崎フォトエッセイ  その248  焼きたて    ←前 →次  HOME

「焼きたてのパン屋さん」が増えている。以前は珍しかった。製パンメーカーにはない、手作りの面白さがあった。それでいて値段も高くはなかった。朝一番に行くと、本当に釜からでてきたパンが、そのまま陳列されていて、まだ温かいのだ。もっとも昨日の売れ残りも並んでいたが……。しかし、この種の店が増えると、焼きたてが普通になってしまう。

 僕の世代では、パンは副食で、ご飯がないとき、仕方なく「パンでも買ってきて食べるか」の次元だった。長年ご飯を食べてきた体には、パンは腹に入れてもたよりない食べ物だった。パンと牛乳の組み合わせよりも、ご飯とみそ汁のほうが、食べた気になれた。

 喫茶店のモーニングサービスも、トーストがメインだ。喫茶店でご飯を出すと、何か雰囲気が違ってしまうので、これも仕方がない。

「焼きたてではないパン屋さん」でも、最近は、マニアックなパンを売っている。しかし、僕から見ると、ご飯を断念して食べる非常食の意味合いがあるため、結局パンはパンだと思ってしまうのだ。