機能しなくなった看板でも、板塀とかと合体してしまい、その土台と運命をともにするものが多いが、なかにははぎ取られているものもある。

　板塀の日焼け状態がそこだけ違っており、明らかに何かが貼り付けられた跡となって残っている。そうなると、どんな看板だったのかが気になってしまう。

　おそらくその看板があったとしても、ほとんど注意も興味も呼び起こさない類の情報価値しかなかったかもしれないが、何が貼られていたのかという意味での情報が気になる。

　痕跡だけが残っている場合、雑多な想像が可能なので、見当がつきにくいだけに、情緒的印象が残ってしまう。もしかすると、そこにあったのは看板ではなく、塀の一部だった可能性もある。

　似たようなサイズの看板に、多少は心当たりがある。ある金融関係の看板だ。痕跡だけが残されていると、そこを埋めたがる癖があるようだ。