川崎フォトエッセイ  その295  慣れた懐かしさ    ←前 →次  HOME


 個人的な歴史の中で、懐かしく思える時代がある。その時代は、世代によって違っていくので、風景も違ってくる。

 過去に、実際そこで暮らしたり、遊んでいた場所は、文字通りに懐かしい。現実としての懐かしさだ。もちろん、過去のその場所は、もう、今風になっていたり、全く消えてなくなっている場合が多い。そのため、懐かしい思いと同時に、その変貌に驚く。

 知らない街で、似たような懐かしさを感じる建物に遭遇することがある。この場合、実際にはその場所での懐かしい思い出など、何一つないのだが、なぜか懐かしさが込み上げてくる。これは世代的に共通する「懐かしさ」かもしれない。

 ぼくにとってそれは「慣れた懐かしさ」のある場所として、定番になっていく。しかし懐かしさに慣れていくと、出会い頭の印象が徐々に薄れ、普通に戻ってしまう。過去のイメージとのシンクロは、やはり一瞬なのかもしれない。