川崎フォトエッセイ  その355  桜吹雪    ←前 →次  HOME

 桜の花はぱっと咲いてぱっと散るので、花見のタイミングを逸しやすい。雨が降った翌日、桜並木に出てみると、もう花びらは散っていて、普段通りの桜の木に戻っていた。

 しかし、足元を見ると、散った桜が雪のように積もっている。今まで上にあったものが下に来ている。これは踏むのに躊躇する。落葉なら踏むと音がするので楽しいしが、桜の花びらは無音である。

 花を踏むのはやはり抵抗がある。だが踏まないと前へ進めない。

 散った桜も数日後には風で吹き飛ばされたのか、もう歩道から姿を消していた。風が掃除してくれたわけだ。

 さらに数日経過すると、もう桜を意識しなくなる。急に咲いて、桜吹雪を舞わせる派手な存在だっただけに、印象は濃いのだが、散ってしまうと、平常に戻ってしまう。僕らも「花の時」は一瞬で、平常のほうが遙かに時間が長い。その意味で平常というか日常に貢献するような楽しみを持ちたいと願う。