川崎フォトエッセイ  その420        HOME

 日頃街中のごみごみとした風景を見ていると、雲のシンプルな造形美が新鮮に見える。青空が拡がる空は平面的だが、そこに雲が発生すると、それが立体的に見える。空がこんなに大きなものだったのかと感じてしまうのだ。それは、手前のビルと向こうの山との距離感がわかるように、雲もその塊を立体的に捕らえることができるからだ。

 遠くにありすぎる月などは、月面が球面であるとは見えなく、お盆のように平らに見えてしまう。雲は程良い距離にあるため、手前と遠くとの距離感が掴みやすいので、巨大な建造物のように捉えることができるのだ。  平面的なものはわかりやすいが、ある一面しかわからない。立体的なものはリアルで、存在のなされ方までがわかる。

 僕らも平面的なある一面しか人に見せていないことが多い。他人がそれ以上見ようとしても、立体的に見える関係にまでは滅多に近づけない。