川崎フォトエッセイ  その710  航路       HOME

 目立つ目印と、目立たない目印とがある。前者は誰が見ても分かる目印で、後者は個人的な目印だろう。

 前者は公的で、後者は私的と言うことだが、個人が人生という航路を行くとき、公的目印だけでは指標にならない場合もある。つまり、公的な世界で、個人がどう生きるのかは、個人が自分自身で最終的に決めなければいけないからだ。

 個人も公的な存在だが、個人は無機的なものではなく、常に思案に暮れる存在である。大概の場合、一般的と思われている方向へ合わせておけば、間違いはないのだが、私的な情念や気持ちが、それに追従しないこともある。

 一般から離れたとき、私的な目印が必要になる。それは、誰が見ても分かるほど分かりやすい目印ではない。

 目印は、目的地ではない。そこへ行く過程で、迷わないようにする仕掛けだ。目印に固執すると、逆に目印が目的になる。