川崎フォトエッセイ  その755  影への視点       HOME

 交錯した世界で、自分を見失うことがある。逆にそんな世界でこそ、リアルな自分を再認識することもある。

 自分の視点は、自分の位置に固定されており、決して他人の視点にはなりえない。ちょっと引いた視点からものを見ると言っても、自分の引力内での出来事である。

 魂が肉体から抜けだし、自身の後頭部が見えるというような現象は日常的ではない。

 自分の姿をビデオカメラで人に写してもらいながら、そのモニターをリアルタイムで自分で見る場合、今そこで動いている自分を見ることができる。しかし、そのカメラの視点はカメラマンのものか、または、無人の無機的な視点となる。

 自分の影を見ながら歩く場合、その影を見る視点も自分自身である。だが、その影が、誰だか分からなかったりすることもある。それが自分であると知った瞬間、この世に自分が存在することを、とっさに気づく。