川崎フォトエッセイ  その819  蓋       HOME

 汚いものには蓋をする時代である。用水路やどぶ川の場合、蓋をすることによるメリットは確かにある。川の中は歩けないが、蓋の上は歩ける。その蓋がコンクリートで舗装された疑似歩道とかになる。幅の狭い道などでは道幅が広がるメリットがある。

 蓋の上を花壇にし、「美しい町」の貢献にもなる。しかし、不自然さがつきまとうのは、リアリティが隠されてしまったためだ。町そのものが嘘臭くなっている。

 蓋の下は、単なる土管のような溝になり、機能としては地下用水路となる。陽が当たらないため、藻や魚は生息しにくい。

 本来なら日常的に目にしていたものが、隠されてしまうと、バランスが偏ってしまう。

 お利口で、機能的で、清潔で、健全な外観が町を覆うと、環境としてそれが標準となり、日常化される。

 しかし、リアルなものは死んでおらず、どこかにはけ口を求める。その場所が怖い。