川崎フォトエッセイ  その820  奥行き       HOME

 人工物は奥行きが浅い。それは当然のことである。この世を作ったのが神様だとすれば、その奥行きに匹敵するものを、人は作り出せないからだ。

 しかし、人工物には意味としての奥行きは深い。人間は意味をとらえ、いろいろ考えることができるからだ。

 よく見かけるような植物に実がなっているとする。意味としてはそれほど大きくはない。庭の植木なら、鑑賞が主で、その実をもいで食料にする…とかの次元ではない。

 だが、人工物で覆われた町の中にあるそれらの植物は、レベルの違う奥行きを見せてくれる。

 植物の持っている振る舞い方は、人工物のそれよりも自然であり、そのメカニズムは謎に満ちている。それに関与することはできるが、その仕掛けは作れない。これが奥行きとして感じられる。

 もし、この種のものが消えてしまうと、人という生物は不安になるはずだ。