川崎フォトエッセイ  その900  群れ       HOME

 雑踏の中に出ると、生きている実感を感じることがある。大自然の中にいるときは、一つの生命としての存在を感じるが、街の雑踏では、社会的生き物としてのそれになる。

 自分が何かをしているように、人も何かをしていることが分かる。逆に人が何らかの動きをしているので、自分もそれに乗せられて、共振するかのように身構えてしまう。

 人が動いているのを見ると、自分もそれなりの動きをしたくなる。これは野心的なことではなく、人並みの動きであれば、溶け込みやすい。

 雑踏の中の人々も、お互いにその動きを気にしているわけではないだろうが、人間は群れをなして生きている動物なので、どうしても、群れが気になるのだろう。

 個人の時代といわれていても、人は個人単位では生きていけないことは分かり切っている。多少は、群れの中にいても、自分というものを確認する程度の「個人」が妥当かもしれない。