川崎フォトエッセイ  その992  山里       HOME

 人家のない場所から里に出るとほっとする。別に遭難したわけではなくても、助かったような気になる。

 山の中で、山を日常の場として暮らしている人にとっては街中はくつろげない場かもしれない。

 山から里に出ても、町の暮らしがすぐにあるわけではない。特に山里では、街中にあるような喫茶店を探すのは難しいだろう。しかし、里の向こうには街があり、喫茶店はすぐそこにある。

 またその山里が観光地なら、街中から来た人のために喫茶店があるかもしれない。

 山里は街中での穢れを浄化する情感がある。山は自然だが、山里は自然ではない。しかし街中よりも自然の息吹は高い。

 この息吹を実感できるのは、街中で暮らしている人にとってはわずかな時間だろう。ベースが街中である限り、受け入れてはまずい息吹なのだ。