川崎フォトエッセイ  その1190  根っこ       HOME

 根を張ると、そこから動くのが大変になる。しかし、根を張っていない存在は不安定で、根無し草という言葉があるほどだ。

 根っこだけの存在もある。もう地上ではアクティブでない存在だが、その場を占有している。

 邪魔なのだが、きつく張られた根を抜きにくい。

 存在はしているが、生きているだけの存在だ。しかし抜くとなると存在を主張するかのように、根は強情だ。

 根こそぎ抜き取ることが困難な場合、放置するしかない。そのうち根も腐り、土に帰ることを待つしかない。

 地表での戦いではなく、地下での戦いがある。根っこ同士の戦いだ。存在をかけての戦いだけに、過酷なものになるだろう。

 人は、その存在に対して、淡泊になりにくい。存在を否定されるのは辛いためだ。

 根っこだけでもよいから、存在してほしいものと、そうでないものとがある。前者になるのは名誉なことだろう。