よく見かけていたものでも、いつの間にか消えてしまうことがある。

　消えてすっきりするものもあれば、なくなると淋しく思うものもある。

　消えゆくものにもそれなりの事情がある。時代が、それを必要としなくなると、消えるか新しいものに取って代わられる。

　しかし、次の時代、それを必要としたとき、同じものは戻ってこないか、戻すにはかなりの年月がかかる。

　一度捨てられたものが復活し、その後また捨てられることもある。それは復活させようとする意志の裏側にある現世的な企みが強すぎるためかもしれない。

　時代の精神を何らかのものを復活させることで定着させようとする企てもある。

　何気なくそこにあった快いものが、ある日急に消えていると淋しく思うのだが、その感傷の中に、その人の現実生活とは矛盾する方向を惜しみながら眺めていることもある。