川崎フォトエッセイ  その527  意識の結界      HOME

 街の仕掛けは入り組んでいるほど都会の闇を感じさせてくれる。壁や仕切の向こう側に何があるのかは掌握しきれない。天井の上に何があるのか、床の下に何があるのか、などもわかりにくい。それらがはっきりしてしまうと、逆に神秘性が薄くなる。

 この神秘性は都会の拡がり、世間の拡がりでもある闇へと繋がっており、その中での個人は小さな存在になる。  ある場所を工事した人なら、その仕組みを知っているかもしれないが、工事後はその場所へ行くのは希だろう。

 都会は迷路である。そこには「我が町」というようなローカル性が希薄だ。だからこそ泳ぎやすいのだ。

 僕らは全てのことを見知っているわけではない。都会はそれを教えてくれる。街の仕掛けは単純なものだが、仕掛け方や仕切方が一種の結界をなし、人々に意識の階層を切り替えさせるようだ。