川崎フォトエッセイ  その543        HOME

 かなり昔の日本では、高い建物はあっても、そこで住むというようなことはなかったのかもしれない。塔や天守閣は象徴的なもので、居住空間性は希薄だったと思う。

 二階建ての民家も、階段での上り下りなどを考えると、一階よりも不便だったはずだ。しかしエレベーターやきっちりとした階段ができることで、一階との差が縮まり、高層マンションのように、上へ上へと領域が拡張されていった。

 高い建物は大昔からあるので、それに対しての驚きはさほどないが、そこで住むという経験は、日本人にとっては最近のことだろう。しかし、生まれ育った場所が最初から団地の四階とかの世代になると、それがディフォルトになるようだ。

 平屋で生まれ育った僕としては、二階や三階に住むことは、逆に誇らしく感じることがある。高い場所に住むことが、楽しいと思えるような遊び心や、珍しさがあるためだろうか。