川崎フォトエッセイ  その971  見たかった風景       HOME

 自分の中に物語がある。その物語と現実の風景が重なることがある。昔から知っていた風景に出合う心境となる。

 自分の中の物語は、人から聞いた話などで構成されていることがある。または、映画やテレビ、または小説の中に出てくる風景が元になっていることもある。

 それらは他人の風景なのだが、それを受け入れたとき、または印象深く刻み込まれたとき、自分の風景に変換することもある。当然、元ネタの意味合いとは遠く離れたものになる可能性もあるし、軽重も違ってくる。

 その風景に対し、特に深い意味はなく、何となく気になるような印象だけで、含まれているものを透視出来ないまま、眺めていることも多い。

 はっきりと意味が見出される風景は逆に意味が先にきてしまい、実感があとになるため、純粋な体験からやや離れる。

 見たかった風景のほとんどは、普段は忘れているような風景で、普段は意識していない風景である。そこへアクセスする瞬間が快いのだ。